建物更生共済(タテコウ)の税金の取り扱いを解説【確定申告】
建物更生共済の概要
建物更生共済(通称:たてこう/ 建更)は、JA共済が販売している保険商品です。建物更生共済は火災に加えて、台風や地震などによる建物や動産等の損害が広く保障される保険商品になっています。共済期間は最長30年間にわたる長期間にわたる契約になります。具体的な商品としては、むてきプラス「建物」や、むてきプラス「家財」があります。
一般の火災保険は掛け捨てになっている商品が多く、課税関係で悩むことは少ないです。一方、建物更生共済は掛け捨て部分と積立部分が存在することから、税務・会計上の取り扱いにあたって注意が必要です。以下では、建物更生共済の取り扱いについて税目別に解説します。
※【免責事項】当記事は投稿日時点に施行される法令に基づき一般的な取扱いを記載したものです。閲覧者が当記事を参考にして行った税務申告は閲覧者自身の責任によって行われ、当記事の内容に誤りがあり閲覧者に損害が生じた場合でも当事務所は責任を負いません。
所得税の取り扱い
共済掛金を支払ったとき
共済掛金支払時の取扱いは共済の対象が居住用住宅分か、賃貸アパート等の事業用建物かによって処理が分かれます。
自己居住用の住宅・家財に対する共済掛金の支払い
居住用の建物や生活用の動産を共済対象として加入している場合は、地震保険料控除を受けることができ、所得税の申告において所得税からマイナスすることが出来ます。その結果、所得税・復興特別所得税・住民税の負担が軽減されます。
地震保険料控除の金額は、払い込んだ掛金のうち、地震保険料控除対象掛金部分になり、その金額は地震保険料控除掛金証明書に記載の金額を申告することになります。
事業用・業務用の建物に対する共済掛金の支払い
個人事業主の不動産所得、事業所得等の計算にあたって、掛け捨て部分(必要経費・損金対象額)は必要経費に算入されます。
たとえば、共済掛金の年額が9万円、内訳として積立部分が7万円、掛捨部分が2万円の場合は以下のような仕訳になります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
保険料(非課税) | 20,000円 | 普通預金 | 90,000円 |
保険積立金 (or事業主貸) | 70,000円 |
満期共済金を受け取ったとき
契約者(=共済掛金負担者)本人が、満期共済金を受け取る場合
満期共済金は一時所得として課税されます。一時所得の計算方法としては、以下のようになります。
一時所得の金額 =(満期共済金の額 - 支払った共済掛金 - 上限500,000円)÷2
上記算式の「支払った共済掛金」とは、これまでの支払った共済掛金のうち積立金部分の合計額となります。つまり、これまで払い込みした共済掛金の累計額から必要経費に算入した金額の累計額を控除した金額です。
なお、不動産事業用や一般事業用の口座に入金があった場合においても、上記の通り所得税の課税関係は一時所得になることから不動産所得、事業所得の計算上の損益に影響させないように工夫が必要です。
具体的にはたとえば満期共済金が200万円入金され、それまでに支払った積立金部分が180万円ある場合は以下のような仕訳になります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 2,000,000円 | 保険積立金(不課税)※ | 1,800,000円 |
事業主借 | 200,000円 |
このように建物更生共済の掛金の支払額は、①掛け捨て部分の共済掛金は不動産所得や事業所得の計算上の毎年の経費に、②積立部分の共済掛金は共済金受取時の一時所得の金額の計算上の収入からの控除額として分かれてきます。二重控除が起きやすいため注意が必要です。
契約者(=共済掛金負担者)本人以外の者が、満期共済金を受け取る場合
この場合も、上記の「契約者(=共済掛金負担者)本人が、満期共済金を受け取る場合」と同様の取り扱いとなります。
第三者が保険料を負担した契約に係る損害保険の解約返戻金や満期返戻金、生命保険の返戻金の受取りは、みなし贈与財産として贈与税の課税対象となります(相続税法5条2項)。しかし、建物更生共済契約の場合は、火災等を保険事故とする損害保険契約に係る返戻金であることからそのような規定がありません。そのため、他の保険の課税関係と異なり、契約者以外の者が満期共済金を受け取る場合は、一時所得として課税されることになるため注意が必要です。
保険事故があり、火災共済金・傷害共済金を受け取った場合
被共済者に支払われた火災共済金・傷害共済金は所得税の計算において非課税となります。
中途解約したとき
上記の「満期保険金を受け取ったとき」と同様の取扱いになると考えられます。
相続税の取り扱い
一般的に火災保険は掛け捨て型も多く、支払い方法も月払いや年払いが多いことから、解約時に戻ってくるお金もゼロかきわめて少額となることが多く、相続財産とはならないことも多いです。しかし、建物更生共済は積立部分が存在する保険商品であることから、相続税の計算においては注意が必要です。
亡くなった方(被相続人)が共済掛金を負担していた場合
建物更生共済に係る契約者が死亡した場合、その契約は死亡した契約者の相続人に承継される約款内容となっています。そのため、亡くなった方が負担していた建物更生共済契約については、建物更生共済に係る権利として亡くなった方(被相続人)の相続財産となります。評価額は相続開始時における解約返戻金相当額となります。
なお、上記の例外で、契約者および被共済者が相続人で、共済掛金の負担だけを亡くなった方(被相続人)が行っていた場合は生前贈与として取り扱うものと考えられます。
※ただし、実務上、このようなケースで贈与税の申告が毎年適切に行っていないケースが多く、相続財産として解約返戻金相当額で評価することも多いです。
相続人が共済掛金を負担していた場合
被相続人が所有する建物に相続人が建物更生共済を掛けている場合、亡くなった方(被相続人)の相続財産とはなりません。満期共済金の受取時には共済を掛けていた相続人(満期共済金受取人)の一時所得として課税対象となります。
法人税の取り扱い
共済掛金を支払ったとき
課税所得の計算にあたって、掛け捨て部分(必要経費・損金対象額)が損金に算入されます。具体的な金額の内訳はJA共済から発行される共済金掛金領収書などの書類により確認することが可能です。
たとえば、共済掛金の年額が9万円、内訳として積立部分が7万円、掛捨部分が2万円の場合は以下のような仕訳になります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
保険料(非課税) | 20,000円 | 普通預金 | 90,000円 |
保険積立金(不課税) | 70,000円 | | |
満期共済金を受け取ったとき
満期共済金を受け取ったときは、受取金額から対応する共済掛金の積立部分の累計額を控除し、残額を雑収入や保険料のマイナス等の科目で処理します。
たとえば満期共済金が200万円入金され、それまでに支払った積立金部分が180万円ある場合は以下のような仕訳になります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 2,000,000円 | 保険積立金(不課税) | 1,800,000円 |
雑収入(不課税) | 200,000円 |
消費税の取り扱い
共済掛金を支払ったとき
共済掛金の支払は非課税仕入に該当します(消令10条3項13号、消基通6-3-3)。
満期共済金を受け取ったとき
満期共済金の受取は不課税取引に該当します。
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