NFTを取得する場合の相続税・贈与税の評価

NFTとは

NFT(Non-Fungible Token)とは主にイーサリアム(ETH)のブロックチェーン上で構築できる代替不可能なトークンのことです。
例えば、紙幣はそれ自体が破損しても同じものに交換することができますが、絵画の原画であったり、有名人の直筆サイン入りアイテムそれに代わるものはなく、同じものはこの世に一つとしてありません。NFTとは、そのデジタル版のような仕組みで仮想通貨と同じブロックチェーン技術を利用して、デジタルデータに一点ものの価値を付与したものです。

NFTの取引量は2021年~2022年に話題となり、ピーク時は年間で数兆円規模に達しましたが、その後取引量が急減しています。しかし、今なお一定の市場規模を有しており、投資対象として財産性の側面も有しています。

そこで、今回は今後の相続や贈与の対象となった場合に、NFTをどのように評価すれば良いかを解説します。

※【免責事項】当記事は投稿日時点に施行される法令に基づき一般的な取扱いを記載したものです。閲覧者が当記事を参考にして行った税務申告は閲覧者自身の責任によって行われ、当記事の内容に誤りがあり閲覧者に損害が生じた場合でも当事務所は責任を負いません。万が一記事の内容に誤りがある場合、お問い合わせフォームからお知らせいただけると幸いです。

NFTと相続

NFTは相続財産になるか?


財産的価値のあるNFTは、相続財産になります。

相続人が複数いる場合は、原則として遺産分割協議の対象となる点に留意が必要です。

筆者が独自にNFT取引所に照会を行ったところ、ある取引所においてはその取引所の仕組みとして「NFTを相続により名義変更することはできない」旨の回答がありました。
(別の大手取引所では名義変更可能との案内もありました。)

このように名義変更ができない場合、相続人がNFTを引継いで換価換金出来ないにもかかわらず、相続税だけが課税されてしまう可能性があるため生前に何らかの対策を講じる必要があります。

NFTの相続財産調査をする方法

NFTはデジタル財産であるため、亡くなった方がNFTを保有していたかどうか調べることは困難です。

亡くなった方(被相続人)がNFTを所有していたかどうかについて、亡くなった方の預金出金履歴、暗号資産の取引所の入出庫履歴を調査すると、手がかりが掴める可能性はあります。

NFTの購入時の決済は大半がイーサリアム(ETH)の暗号資産を用いて行います。したがって利用していた取引所の暗号資産の口座が判明している場合には、相続人の立場から暗号資産取引所に亡くなった方の入出庫の明細を取得し、イーサリアムの出庫状況を確認することで何らかの手掛かりを得ることが出来る可能性はあります。しかしながら、その情報のみで亡くなった方が所有していたNFTを特定することは困難であると考えられます。

上記の通り、NFTは相続手続で所有者を変更できない可能性があります。そのため財産的価値のあるNFTは所有者自身が生前のうちに例えば以下のように対策しておくことが望ましいです。

  • 生前にNFTを売却換金して別の資産に換えておく。
  • NFTを生前に贈与する(※ただしNFT取引所に問い合わせたところ無償譲渡する仕組みがなくマーケットを通じて取引を行うほかない旨の回答もありました)。
  • 生前にNFTの取引所のIDやパスワード、所有しているNFTの財産リストをメモして残しておく。

NFTの評価方法

NFTの評価方法については、この記事の投稿日時点において財産評価基本通達に具体的な規定がありません。

具体的な評価規定がない場合は、評価通達5(評価方法の定めのない財産の評価)の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価することとなります。

そこで、NFTの評価を具体的にどの通達の評価方法に準じて評価するかですが、評価通達135(書画・骨とう品の評価)に準じ、以下のように評価することが国税庁のFAQによって例示されています。

評価通達135(書画・骨とう品の評価)に準ずる場合の評価方法

① 課税時期における市場取引価格が存在する場合:
 その市場取引価格

② 課税時期における市場取引価格が存在しない場合:
 その内容や性質、取引実態等を勘案し、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌した金額

参考リンク:国税庁 NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)

NFTは個別性がとても強い財産となるため市場価格が形成されることは難しいと考えられますが、取引回数が多い人気のNFTの場合については、以下のような取引サイトで相場を確認できる場合があり、市場取引価格や売買実例価格の参考になる可能性があります。
・OpenSea
・Rarible
Coincheck NFT

精通者意見価格とは、その分野の価格事情に精通する専門家の見解による価格のことです。

なお、国税庁の「誤りやすい事例」を確認したところ、取得価額により評価するのは誤った取扱いであることが示されています。

【誤りやすい事例】
相続税の計算上、NFTについて被相続人が当時購入した取得価額により評価すること。

少なくとも上記で示されている評価通達5での検討過程を飛ばして、単に取得価額で評価とすることは当局としては認めていないようです。

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