リビングニーズ特約(生前給付金)の受け取りは税制面で注意
リビング・ニーズ特約とは?
生命保険金は通常、被保険者が死亡したことにより支払われる保険ですが、
死亡保険金の一部を生前給付金として前倒しで受け取ることが出来る制度があります。これをリビング・ニーズ特約と言います。
リビング・ニーズ特約は、死亡保険金が支払われるタイプの生命保険に付帯可能な特約であり、被保険者が余命6か月以内等一定の余命期間を診断された時に、死亡保険金を前払で受け取ることができます。この特約に保険料はかかりません。一般的に上限金額は3,000万円となっています。
このように、残された余生で生前に保険金を受けることが出来る大変有用な制度です。
しかし、税金面では注意が必要になります。
所得税の取扱い
まず、所得税の取扱いです。
リビングニーズ特約による生前給付金を受け取ったことによる収入はシンプルに全額が非課税とされます。
所得税法施行令(非課税とされる保険金、損害賠償金等)
第三十条 法第九条第一項第十八号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補塡するための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
一 損害保険契約に基づく保険金、生命保険契約又は旧簡易生命保険契約に基づく給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金
所得税基本通達 9-21 高度障害保険金等
疾病により重度障害の状態になったことなどにより、生命保険契約又は損害保険契約に基づき支払を受けるいわゆる高度障害保険金、高度障害給付金、入院費給付金等(一時金として受け取るもののほか、年金として受け取るものを含む。)は、令第30条第1号に掲げる「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」に該当するものとする。
相続税の取扱い(注意)
続いて相続税においては取扱いがやや複雑で、大きく2点注意点があります。
1つ目の注意点です。
被保険者がリビング・ニーズ特約により生前給付金を受け取った後、そのお金を使い切ることなく死亡した場合、残っていたお金は相続財産として相続税の課税対象になります。
なお、余命宣告を受けた被保険者が受け取る場合に限らず、指定代理人として被保険者の配偶者などが受け取った場合においても同様に相続財産となります。
2つ目の注意点です。
死亡時に生命保険金が支払われ、法定相続人が生命保険金を受け取る生命保険契約の場合、「500万円×法定相続人の数」だけ生命保険金が非課税になります。
ところが、リビング・ニーズ特約を使用する場合には、死亡時ではなく、生前に生命保険金が支払われることになるため、本来適用できたはずの生命保険金の非課税の適用が出来なくなります。
このように、リビング・ニーズ特約は有用な制度ですが、特に相続税申告においては思わぬ課税を受けてしまうことになるため注意が必要となります。
なお、上記の生命保険金の非課税枠を使い切れないくらい多額の生命保険に加入している方は、非課税枠を超える部分は生前給付金を受け取る、受け取らないにかかわらずどのみち相続税が課税されてしまうため、損をすることはありません。また、生前給付金として受け取る保険金を生前に使い切ってしまえば相続税はかかりません。
損をしてしまうケースは、生命保険金の非課税枠を使用することが出来たはずなのに、リビングニーズ特約により生前給付金を受け取り、かつ、使い切れずに亡くなってしまうケースです。
このような状況を極力避けるための解決策としては、大口の金額で契約するのではなく、契約金額を細分化して使う予定の金額だけを生前給付金として受け取ることが考えられます。
ここまで税制面での取り扱いを解説しましたが、ご本人の希望や家族の意向がもっとも重要な考慮事項となります。
状況に応じて、適切な判断が必要となります。
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