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【令和8年度税制改正】関連者間取引に係る書類の整理保存の特例とは?グループ会社間取引で対応が必要になる内容を解説

令和8年度(2026年度)税制改正により、「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」が創設されました。

名前だけを見ると難しそうな制度ですが、簡単にいうと、

「グループ会社などの関連会社に一定の費用を支払う場合、その金額がどのように決まったのか分かる資料をきちんと残しておきましょう」

という制度です。

特に注意したいのが、親会社から子会社への経営指導料や管理料の請求、グループ会社間の共通経費の配賦などです。

令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、3月決算法人であれば原則として2026年4月1日開始事業年度から対応が必要となります。

今回は、この新制度について経営者・経理担当者の方向けにできるだけ分かりやすく解説します。

目次

1.なぜ新しい書類保存ルールができたのか

通常、第三者との取引であれば、取引価格について双方の利害が対立します。

例えば外部のコンサルティング会社から「毎月100万円です」と提示されれば、「もっと安くならないか」と交渉するのが一般的でしょう。

一方、親会社と子会社などのグループ会社間では事情が異なります。

同じ企業グループ内であるため、

  • 経営指導料 月額100万円
  • システム利用料 月額50万円
  • 本社管理費 年間1,000万円

などと設定されていても、「なぜその金額なのか」が契約書や請求書だけでは分からないケースがあります。

そこで令和8年度税制改正では、一定の関連者間取引について、対価の算定根拠などが既存の書類から確認できなければ、それを補足する書類を作成・保存する制度が設けられました。

2.「関連者」とは誰のこと?

ここでいう「関連者」は、単に同じグループ名を使っている会社という意味ではありません。

代表的なのは、一方の法人が他方の法人の株式等を50%以上直接または間接に保有している関係です。

例えば、

A社 → 100%出資 → B社

という親子会社であれば、基本的にA社とB社は関連者となります。

また、

オーナー → 100% → A社
オーナー → 100% → B社

のように同一の者がそれぞれ50%以上を保有する、いわゆる兄弟会社も対象になり得ます。

さらに、株式保有関係だけではなく、事業方針を実質的に決定できる関係なども「特殊の関係」として対象となる場合があります。国税庁の通達では、事業活動の基本となる著作権・工業所有権・ノウハウ等への依存や、役員の2分の1以上等が他方の法人によって実質的に決定されているケースなどが例示されています。

したがって、中小企業でも複数法人を経営しているオーナー企業は特に注意が必要です。

3.すべてのグループ会社間取引が対象になるわけではない

ここは非常に重要です。

「関連会社との取引は全部、新しい資料を作らなければならない」という制度ではありません。

対象となるのは一定の取引で、国税庁の資料では大きく、

① 工業所有権等の譲渡・貸付け

② 関連者から受ける一定の役務提供

などが挙げられています。しかも、法人税上の販売費・一般管理費その他の費用の額の基因となる取引が対象です。

実務上、特に注意したいのは②です。

国税庁の通達では、例えば次のようなものが示されています。

例:グループ共通費用の負担

例えば、グループ全体で広告宣伝を行い、その費用を各社へ配賦するケースです。

ほかにも、

  • グループ共通ブランドの広告宣伝
  • 販売促進
  • 市場分析
  • 研究開発
  • グループ共通の情報システムやデータベース
  • 建物・設備等の共同利用

などが例示されています。

例:経営指導料・管理料など

親会社などが関連会社に対して行う、

  • 事業計画策定の支援
  • 業績管理
  • 内部管理体制整備
  • 人事・労務
  • 法務
  • 財務
  • その他専門的な業務支援

なども対象になり得ます。

例えば親会社が子会社から毎月「経営指導料50万円」を受け取っているようなケースでは、今回の改正を機に契約内容や請求金額の算定根拠を確認しておいた方がよいでしょう。

4.具体的に何を保存すればいい?

この制度のポイントは、必ず新しい専用様式を作らなければならないわけではないということです。

まず、関連者間取引について保存している、

  • 契約書
  • 注文書
  • 見積書
  • 請求書
  • 領収書
  • 送り状
  • その他これらに準ずる書類

などを確認します。

そして、それらの書類から必要な事項が分かれば、原則として新たな「特定事項記載書類」を作る必要はありません。複数の書類を合わせて必要事項を確認できる場合も同様です。

反対に、必要な情報が不足している場合には、その不足部分を明らかにする**「特定事項記載書類」**を取得または作成します。

例えば経営指導料であれば、

「何のサービスを提供したのか」

「50万円という金額をどう計算したのか」

といったことが確認できる資料を残すイメージです。

5.特定事項記載書類は「取引全部を書き直す書類」ではない

経理担当者にとって気になるのは、

「グループ会社間取引について、また新しい書類を一から作らないといけないのか」

という点ではないでしょうか。

この点について、国税庁の法人税基本通達では、特定事項記載書類について関連者間取引の内容すべてを記載する必要はなく、不足している特定事項が明らかになれば足りるとしています。

例えば、

契約書
→ 業務内容は記載されている

請求書
→ 請求金額は記載されている

しかし、

「請求金額をどう計算したのか」が分からない

という場合には、その計算方法を説明する資料を追加して保存する、という対応が考えられます。

つまり重要なのは、書類の枚数ではありません。

「第三者が見たときに、何の取引で、なぜその金額になったのか説明できる状態になっているか」

という視点で整理すると理解しやすいでしょう。

6.同じ取引を毎月行っている場合は?

例えば親会社から子会社への経営管理サービスについて、

「毎月同じ契約条件で経営指導料を支払っている」

という会社も多いでしょう。

このような反復・継続取引について、取引条件や役務内容に変更がないことを契約書や協定書などで確認できる場合には、一つの特定事項記載書類を作成・取得して保存することでも差し支えないとされています。

したがって、毎月同じ説明資料を作成する必要があるとは限りません。

経理実務では、

基本契約書+算定根拠資料+毎月の請求書

という形で整理しておく方法などが考えられます。

7.いつまでに作成して、何年間保存する?

必要な特定事項記載書類は、対象となる取引を行った事業年度の法人税申告書の提出期限までに取得または作成する必要があります。

さらに、原則として所定の起算日から7年間保存します。

また、必要な特定事項を電子取引によって取得した場合には、電子帳簿保存法に基づいて電子データとして保存する必要があります。

「決算のときに税理士から言われて初めて資料を探す」という運用では負担が大きくなります。

そのため、対象となりそうな取引については、契約時や請求金額を決定した時点から資料を整理しておくことをおすすめします。

8.保存していないとどうなる?

今回の改正で特に注意したいポイントです。

国税庁は、特定事項記載書類の保存が法令に従って行われていないことについて、青色申告の承認取消事由に該当すると説明しています。

青色申告が取り消されると、欠損金の繰越控除など青色申告を前提とした税務上のメリットに影響する可能性があります。

もっとも、書類に不備があれば機械的に直ちに青色申告が取り消される、という意味ではありません。国税庁も、関連者間取引に係る書類の取得・保存義務の履行状況を理由に取消しの要否を判断する際には、本制度の趣旨や事務運営指針を踏まえて取り扱うとしています。

とはいえ、従来以上にグループ会社間取引の根拠資料を残すことが重要になったと考えておくべきでしょう。

9.中小企業でも注意が必要

「グループ会社間取引の文書化」と聞くと、大企業や海外子会社を持つ会社だけの制度と思われるかもしれません。

しかし、今回の制度では国内法人との取引も対象となり得ます。

例えば、オーナー経営者が、

A社:本業を行う会社

B社:不動産を所有する会社

C社:管理業務を行う会社

というように複数の法人を所有しているケースは珍しくありません。

こうした会社間で管理料や経営指導料、システム利用料などの支払いがある場合には、今回の制度を確認しておく必要があります。

10.今のうちに確認しておきたい3つのポイント

令和8年4月1日以後開始事業年度から対象となるため、該当する法人では次の順番で確認するとよいでしょう。

① 関連会社を洗い出す

親会社・子会社だけではなく、同一オーナーが所有する兄弟会社なども確認します。

② 関連会社との取引を洗い出す

特に、

「経営指導料」
「業務委託料」
「管理料」
「システム利用料」
「広告宣伝費の負担金」
「研究開発費の負担金」

などは確認しておきましょう。

③ 金額の根拠を説明できるか確認する

請求書に「業務委託料100万円」とだけ記載されている場合、

「なぜ100万円なのか?」

と聞かれたときに説明できる資料があるかを確認します。

資料が不足していれば、契約書の見直しや算定根拠資料の作成などを検討します。

まとめ

「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」は、単なる書類整理のルールに見えますが、企業にとって重要な改正です。

特に、

複数の会社を経営しているオーナー企業

親会社・子会社間で管理料や経営指導料をやり取りしている企業

グループ共通経費を各社へ配賦している企業

などは影響を受ける可能性があります。

ポイントは、「関連会社にいくら支払ったか」だけではなく、「何の対価として、なぜその金額になったのか」を説明できるようにしておくことです。

制度開始後に慌てて資料を作成するのではなく、現在の契約書・請求書・費用配賦資料などを一度確認しておくとよいでしょう。

グレーシア会計事務所では、法人税務・顧問業務の一環として、グループ会社間取引を含む経理・税務体制についてもサポートしています。関連会社間の取引について「現在の契約書や請求書で問題ないか分からない」「どのような資料を残せばよいか分からない」といった場合は、お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」
  • 国税庁「法人税基本通達 第17章第3節 関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」
  • 国税庁「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
  • 財務省「法人税法施行規則等の一部を改正する省令」
目次