会社員を退職してフリーランスになったときに必要になる手続


開業時の手続きは色々ありますが、重要度と優先度を意識して進めていくと効率的です。筆者の実体験をもとにフリーランスになった時に必要となる手続きの留意点を一覧にして書いてみました。主観にはなりますが手続の重要度はAランク~Cランクまでランク付けしていますのでご参考下さい。

※このページでは、フリーランスとは「個人で独立してビジネスをされている方」と解釈します。人を雇ってビジネスをされている方や、法人化されている方はまた別の手続きとなりますのでご注意下さい。

Aランク(超重要な開業時の手続き)

国民健康保険への加入(または任意継続)

サラリーマンがフリーランスになる際の健康保険の手続きは、大きく以下の2つの方法があります。下記の任意継続(A)するか、国民健康保険(B)に加入するかです。どちらにするかは2年間に支払うべき保険料を試算して試算結果が有利な方で加入申込すると良いでしょう。なお、会社員時代とは違って手続を誰かが代行してくれるわけではないので、自分で書類の準備と提出を行う必要があります。

A:退職した会社の健康保険を任意継続する場合

会社を退職する場合、勤務していた会社が加入している健康保険に退職後2年間に限り加入継続することが可能です。基本的には下記の国民健康保険より任意継続の方が保険料は有利になることが多いです。任意継続する方法は資格喪失日から20日以内に、その会社が加入している健康保険組合に対して「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することで加入できます。1日でも遅れると継続きできなくなるので注意が必要です。詳しい手続きは退職時に勤務先の会社と健康保険組合に問い合わせておくと良いと思います。

B:国民健康保険に加入する場合

国民健康保険は世帯単位での加入となり、世帯主は退職日の翌日から14日以内に国民健康保険に加入をする必要があります。届出先は区役所、市役所になります。加入届出時の持ち物は、役所によりますが、一般的には「健康保険等資格喪失証明書」、世帯主の印鑑、マイナンバーカード等の本人確認書類、口座振替の場合はキャッシュカード(又は通帳と銀行印)が必要となります。

国民年金への加入

日本国内に住所があって、20歳以上60歳未満の場合は国民年金への加入手続きが必要です。手続きは、退職日の翌日から14日以内に区役所・市役所や年金事務局で行うことが出来ます。また、マイナポータルから電子申請することも可能です。

開業届

正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。開業届は納税地を所管する税務署開業から1ヶ月以内に提出が必要な書類です。
フリーランスの場合は会社員と違い、自分や顧問税理士が税金を計算して自分で所得税を納める必要がありますのでこの開業届により税務署に事業を開始したことを知らせることになります。
開業届は社会的に重要な書類となり、上記以外の用途として、事業用銀行口座の開設や、事業用クレジットカードの申込等にあたって事業の実態を示す証拠書類として提出が求められる可能性が高いです。節税にもなる小規模企業共済制度の加入申込にも必要となる場合があります。そういった意味でも開業届は提出すべき重要な書類といえます。

Bランク(重要な開業時の手続)

インボイスの登録申請

正式な名称は「適格請求書発行事業者の登録申請書」といいます。登録申請を行うかどうかは任意ですが、フリーランスの取引先は一般消費者ではなくある程度の規模の企業が多いと思われます。その場合、インボイス登録を済ませておいたほうが業務委託の契約が円滑に進むと予想されます。
企業との外注の契約は退職前に進むことも多くありますが、契約前にインボイスの登録状況を確認されます。一方、インボイスの登録にはかなり時間がかかるので迅速な対応が必要です。
申請先は納税地を管轄する税務署(実際はインボイス登録センター)になります。開業したてのフリーランスの場合は開業した年の年末までに提出することになります。思っていたよりも時間がかかるので注意が必要です。登録までの期間は紙よりも電子申告したほうが早いです。筆者の場合はかなり遅くて電子申告の登録が完了するまでに約3ヶ月ほど要しました。
※長くて難しい話になるのでこのページではインボイス制度の説明や有利不利の説明は省略しています。

事業用銀行口座(屋号付き銀行口座)の作成

 事業用銀行口座を開業時に作成しておくべき意味は2つあります。1つ目の理由は事業用の口座は屋号を入れることが出来ることです。取引先が企業だけであれば正直屋号の記載は不要ですが、個人との取引する可能性があれば屋号付きのほうが請求時に相手からの安心を得られやすいです。
 もう一つの理由は会計帳簿の作成にあたって、プライベートの銀行取引とビジネスの銀行取引を口座単位でしっかり分けておかないと後で大変なことにになるためです。会計帳簿を作成するにあたってプライベートの取引が混入していると、その取引1件1件に対して除外する作業が必要になります。「事業用の入出金はこの口座を使用する。事業用口座でプライベートな入出金はしない。」と決めておきます。無駄な事務作業の時間を削減するためにも事業用銀行口座は上記「開業届」の提出後、すぐに開設の申込をするのが良いでしょう。
 

会計ソフトの申込み

フリーランスになると自分で確定申告を行う必要があります。そのためには日々コツコツと記帳をすることになります。エクセルや紙で記帳しても良いのですが、やはり専用の会計ソフトは便利です。記帳すべき取引がたまってしまう前に会計ソフトを導入して処理していきましょう。freeeであれば経理を自動化してリアルタイムで利益を把握することが可能です。トライアルは無料ですのでまずは試しに登録してみるのもオススメです。

青色申告承認申請書の提出

「青色申告承認申請書」納税地を所管する税務署に提出します。「開業届」と同時に提出するのが良いです。
ちなみに青色申告とは、精度の高い税金の申告を税務署と約束する代わりに、一定の税金計算上の恩恵を与えてもらう仕組みです。申請は任意のため提出しなくても問題ありませんが、メリットが大きいため重要な手続といえます。
そのメリットの一つとしては、青色申告をしていれば所得から65万円を差し引くことが出来ることが挙げられます。例えば年間の所得(≒利益)が500万円程度の場合は税金と健康保険料の合計額が約25万円ほど少なくなります。
メリット金額は所得水準によって変わりますので以下のサイトでシミュレーション出来ます。

Cランク(必須ではないがやっておきたい開業時の手続)

名刺の作成

フリーランスは名刺の提出を求められるケースがあります。例えば屋号付の銀行口座を開設する場合にはその申込時にも提出が求められる可能性もあります。早めに作っておいたほうが無難と思います。

Webサイトの制作

Webサイトは案件の獲得や、商品販売のために制作するメリットがありますが、それとは別に、銀行口座開設時の審査などでも閲覧されることが多いです。作る必要は無いですが、作っておくとそういった点で好都合ですので、余裕があれば作成するはお勧めです。

小規模企業共済の加入

フリーランスに退職金はありません。自分で積立を行い、将来の廃業時にその積立額を受け取るのが小規模企業共済制度です。税制面で非常に有利になります。これは特に急ぎではないのでフリーランスとして軌道に乗ってから税理士などに相談しながら加入するかどうか検討することで十分かと思います。

事業用クレジットカード

ビジネスに必要な物品の購入やサービスの利用はカード決済が便利です。ただ、事業用の銀行口座を開設すると、キャッシュカードにはデビットカードが付帯していることが多く、クレジットカードより銀行口座の開設のほうが優先度は高いと考えられます。

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