新リース会計基準による中小企業への影響は?

2024年9月に企業会計基準第 34 号「リースに関する会計基準」が公表されました。従来の会計基準ではファイナンス・リースかオペレーティング・リースかで会計処理が大きく異なっており、オペレーティング・リースに該当すれば、賃貸借取引として支払時の費用処理を行うことが認められていました。
今後はリース取引に該当すれば「使用権」として全てオンバランスすることが求められるようになります。
【オンバランスとは】
オンバランス(on balance)とは、貸借対照表に資産や負債として計上することです。一般にリース取引を行う場合、毎月の支払額を費用して処理するイメージが強いと思います。しかし、リース取引は物品のレンタルのように1日だけ借りるといったものではなく、長期にわたり資産を借り受け、借り手が独占的に利用することになります。そのような取引は、実質的に相手方からの借入により資産を購入していることと同視されることから、資金の借入によって資産を購入した場合と同じ会計処理を行うことが要求されています(新規購入による資産計上と新規借入による負債計上という意味でのオンバランス)。
これにより、企業が有している資産・負債の計上が簿外処理となってしまうこと(オフバランス)が規制され、企業間の財政状態の比較可能性が確保されることに繋がります。
新リース基準の概要
新リース基準で何が変わり、どのような影響が生じるか?
新リース基準が適用されると、借手側の処理が大きく変わることになります。これまで賃貸借取引として支払時の費用処理のみの会計処理とすることが認められていました(オペレーティング・リース取引)。しかし、このようなオペレーティング・リース取引も含めて、リース取引に該当するものは、全て売買処理とすることが求められます。
オペレーティング・リース取引で特に影響が大きいものが、不動産取引です。例えばオフィスの賃料についてもリース取引に該当することから、資産・負債の計上が必要となり、貸借対照表の総資産の残高に与える影響が大きくなります。ほかにも社用車や複合機のリース料など毎月の支払額を賃借料として定額で費用計上していた取引もオンバランスされることになります。
オンバランス化される取引の例

これまで資産・負債として計上していなかった多くのリース取引が貸借対照表に計上されることとなるため、各種財務指標への影響も大きくなることが予想されます。
いつから適用される?
新リース基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされています
ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することも可能です。新リース基準が公表されてから2年半ほどで強制適用されることになるため、それまでに準備が必要となります。
会計処理はどのように行う?
リース物件については、使用権資産として資産計上し、減価償却されることになります。同額がリース負債として負債計上されることになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
使用権資産 | リース負債 |
貸借対照表上の表示としては、各固定資産科目に含めて表示し、使用権資産を注記する方法と、使用権資産として他の資産と区分して独立掲記する方法があります。また、損益計算書の表示としては、使用権資産の償却費は減価償却費として計上することになります。
現行のリース基準(旧リース基準)で認められている簡便的な取扱いはどうなる?
新リース基準においても現行のリース基準(旧リース基準)と同等の簡便的な取扱いが認められています。
現行のリース基準(旧リース基準)では少額リース取引として、「企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、かつ、リース料総額が300万円以下」の場合はオペレーティング・リース取引として処理することが可能ですが、新リース基準でも当該取扱いは引き継がれています。また、リース期間が12カ月以内のリース取引も短期リースとしてオペレーティング・リース取引として処理することが可能です。
リースの貸し手の会計処理はどう変わる?
貸し手の処理は現行のリース基準(旧リース基準)から基本的に変更ありません。
中小企業でも新リース基準による会計処理が必要?
中小企業の大多数は、新リース基準による会計処理を行う必要はありません。
新リース基準の適用が強制されるのは企業会計基準の適用が強制される以下のような企業になります。
・上場企業およびそのグループ会社
・上場はしていないものの金融商品取引法監査の規制を受ける一定の大企業
・会社法監査の対象企業(資本金が5億円以上または負債額が200億円以上等の一定の企業)
上記以外の中小企業では、一般的に税務申告の便宜のために法人税法の基準での会計処理が実務上行われており、今後も法人税法に沿った処理が行われることが想定されます。
法人税等の税務申告への影響はある?
2024年12月現在において、「新リース基準」に合わせるような税制改正は行われていません。法人税法における取扱いは新リース基準の適用開始後においても従来通りの処理を行うことになります。
今後法人税法や消費税法に関して税制改正が行われる可能性があるので注視が必要となります。
【2024年12月更新】
令和7年税制改正大綱において、新リース会計基準に関して税法上の対応がされないことが明らかになりました。借手の法人税における処理について、オペレーティング・リース取引については、支払金額のうち債務の確定した部分の金額をその確定日の属する事業年度に損金算入することとされました。
つまり、新リース基準で資産計上が必要となるオペレーティング・リース取引は、税会不一致の状態となり、別表での所得調整が必要となり、税効果会計の対象(一時差異)となります。
中小企業については新リース基準の適用は任意であることから、現行のリース基準(旧リース基準)による会計処理を行う限りにおいて、税会一致の状態が今後も続くため、特段難しい処理を行う必要はありません。
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