税込経理と税抜経理どちらを選択すべきか?【消費税】

法人設立や個人事業の開業をして会計ソフトを導入時に消費税の初期設定をすることになりますが、その際に、「税抜経理」か、「税込経理」を選択するする必要があり、悩ましいかと思います。

今回は「税抜経理」と「税込経理」どちらを採用すべきかの判断材料として、それらの適用ルールと税制への影響を解説します。

目次

消費税の税抜経理・税込経理の適用ルール

法人の場合

①上場企業やそのグループ会社等の場合

企業会計基準の適用が強制される上場企業やそのグループ会社等については、「税抜経理」を採用する必要があります

これは、「収益認識に関する会計基準」において明確化されています。

企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準
2018年会計基準では、取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう(第 47項参照)としており、我が国の売上に係る消費税等は、第三者に支払うために顧客から回収する金額に該当することから、2018年会計基準における取引価格には含まれない。

②上場企業やそのグループ会社以外の企業の場合

上場企業やそのグループ会社以外の法人の場合は、税抜経理と税込経理のどちらを採用するかは任意です

補足になりますが、「中小企業の会計に関する指針」に準拠して決算書を作成する場合には、税抜経理を適用することが原則とされています。

中小企業の会計に関する指針
61.消費税等の会計処理 消費税等(地方消費税を含む。)については、原則として税抜方式を適用し、事業年度の末日における未払消費税等(未収消費税等)は、未払金(未収入金)に計上する。ただし、その金額の重要性が高い場合には、未払消費税等(未収消費税等)として別に表示する。

個人の場合(個人事業主・フリーランス)

特にルールはなく、どちらを選択するかは任意です
なお、免税事業者は税抜経理方式によることはできません。

税込経理・税抜経理の選択により生じる税制上の有利不利

消費税の経理方法の選択は、税金計算にも影響を及ぼします。
例えば以下のような事項です。

交際費等の損金算入限度額(法人税・所得税)

交際費等の中小企業の定額控除限度額(800万円)を超える金額の判定は、採用した経理方法に応じて行います。つまり、税込経理の場合は消費税込の金額で判定を行わなければなりません。よって、税抜経理のほうが有利となります

さらに、損金不算入の対象から除外される飲食費(1万円)基準についても同様に、税込経理の場合は消費税込の金額で判定を行わなければならず、税抜経理のほうが有利となります

【補足】法人税の誤りやすい事例 控除対象外消費税
税抜経理方式を選択適用している法人は、交際費等に係る消費税等の額のうち控除対象外消費税額等に相当する金額を交際費等の額に含めて損金不算入額を計算する必要があるため注意が必要です。

減価償却資産の取得価額(法人税・所得税)

少額減価償却資産(30万円未満基準)、一括償却資産(10万円以上20万円未満基準)の取得価額の金額判定についても、採用した経理方法に応じて行います。税込経理の場合は消費税込の金額で判定を行わなければなりません。よって、税抜経理のほうが有利となります

(少額の減価償却資産の取得価額等の判定)
9 令第138条((少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入))、令第139条((一括償却資産の必要経費算入))又は令第139条の2((繰延資産となる費用のうち少額のものの必要経費算入))の規定を適用する場合において、これらの規定における金額基準を満たしているかどうかは、個人事業者がこれらの規定の適用がある減価償却資産に係る取引について適用することとなる税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、その適用することとなる方式により算定した取得価額又は支出する金額により判定することに留意する。
出所:国税庁 消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて

償却資産税の取得価額

償却資産税の課税標準の算定に使用する取得価額については、税込経理の場合は税込の金額で計算することとされます。よって、税抜経理のほうが有利となります

大阪市 よくある質問(償却資産関係)
問3 償却資産の取得価額を算定する場合の消費税の取り扱いについてはどうすればよいですか?

法人税または所得税の会計処理において、税抜経理方式を採用している場合は消費税を含まない金額となり、税込経理方式を採用している場合は消費税を含んだ金額となります。

中小企業投資促進税制等の税額控除(法人税)

中小企業投資促進税制といったような、一定の投資に対して税額控除を受けられる特例については、投資額(資産の取得価額)×税額控除割合で税額控除の金額が算出されるものが多いです。この投資額は、税込経理の場合は税込の金額で計算することとされることから、一般的には税込経理のほうが有利となります

まとめ

ここまでをまとめると以下のようになります。税抜経理のほうが損益計算において理論的で、なおかつ税制面でも有利になることが多いものと考えられます。

税込経理税抜経理
特徴・経理処理が簡単
・損益が適切でない
・経理処理がやや煩雑
・損益が適切
交際費(法人税/所得税)不利有利
減価償却資産(法人税/所得税)不利有利
償却資産税不利有利
中小企業投資促進税制等の税額控除有利不利

ただし、交際費や固定資産の額が高額でないかぎり劇的な有利不利までは生じないと考えられますので、特に個人事業の場合など経理の手間が簡単な税込経理を選択するのも良いと考えられます。

メリット、デメリットを理解して適切な経理方法を選択しましょう。

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