相続税の期限後申告における課税関係【小規模宅地の特例・ペナルティ】

相続税の申告期限は10カ月あり、個人所得税や法人税と比べてもかなり長く設定されています。

しかし、相続税は税務申告に慣れていない一般家庭の相続人に対して課税されるという点や、遺産分割協議が難航することなどもあり、申告期限に間に合わないケースも見受けられます。

今回は相続税の申告期限に間に合わなかった場合、どのような影響が出るのかを解説します。

※【免責事項】当記事は投稿日時点に施行される法令に基づき一般的な取扱いを記載したものです。閲覧者が当記事を参考にして行った税務申告は閲覧者自身の責任によって行われ、当記事の内容に誤りがあり閲覧者に損害が生じた場合でも当事務所は責任を負いません。

目次

小規模宅地の特例は法定申告期限後でも使えるか?

小規模宅地の特例が期限後申告で適用があることは、租税特別措置法の条文上に明記されています。
以下、条文の原文で確認します。

租税特別措置法 第69条の4  小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
1 個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族の用又は居住の用に供されていた宅地等で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるものがある場合には、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、当該個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部でこの項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたものについては、限度面積要件を満たす場合の当該選択特例対象宅地等に限り、相続税法第11条の2に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする。

7 第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする者の当該相続又は遺贈に係る相続税法第27条又は第29条の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む。次項において「相続税の申告書」という。)に第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

小規模宅地の特例は、土地の評価額を最大で80%減額することが出来る、相続税額を減らす影響が非常に強力な特例です。期限後申告であっても必ず適用できるかどうか検討すべきです。

具体的な適用方法についてパターン別に期限後申告の場合の小規模宅地の特例の取り扱いを説明します。

1.期限後申告時に遺産分割協議が完了している場合

期限後申告時に遺産分割協議が完了している場合、小規模宅地の特例の特例の適用が可能です。

相続税の申告書に小規模宅地の特例の適用を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付することで適用が可能です。手続きとしては通常の期限内申告で小規模宅地の特例を適用するケースと同じになります。

2.期限後申告時に遺産分割協議が完了していない場合

小規模宅地の特例の適用にあたっては、遺産分割協議が完了していることが条件となるため、小規模宅地の特例の適用を受けるためには「申告期限後3年内の分割見込書」を相続税申告書(期限後申告書)に添付する必要があります。

この段階ではまだ小規模宅地の特例の適用を受けることは出来ず、一旦は小規模宅地の特例の適用前の金額で計算した相続税額を納付することになります。

その後、遺産分割が完了してから4カ月以内に更正の請求を行うことで小規模宅地の特例を適用する(還付を受ける)ことが可能です。

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ペナルティ(無申告加算税、延滞税、過少申告加算税)

ここまで解説したところでは、意外と申告期限に間に合わなくても特例が適用できる余地があり、デメリットが少ないようにも感じます。

しかし、期限までに申告・納付しなかった場合には以下のペナルティ(附帯税)が追加で課税されることになるため、期限内に申告・納付出来るように最大限努力することが税額の最小化に繋がります。

ペナルティの区分ペナルティが課される条件ペナルティの税額
無申告加算税
(自主的申告の場合)
法定の申告期限までに申告書を提出しなかった場合で、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合本来の税額×5%
無申告加算税
(税務調査後の場合)
法定の申告期限までに申告書を提出しなかった場合50万円以内の部分:本来の税額×15%

50万円超の部分:本来の税額×20%

300万円超の部分:本来の税額×30%
延滞税税金が法定の納付期限までに納付されなかった場合納付すべき税額に対して以下のいずれか低い利率による金額
①7.3%/年
②延滞税特例基準割合+1%

※延滞特例基準割合は現在2%台で推移しています。令和6年末までは2.4%になります。
過少申告加算税期限内申告について、修正申告・更正があった場合過少になっていた税額×10%

※ただし、当初の納税額と50万円のいずれか大きい金額を超える部分は15%
重加算税仮装隠蔽があった場合申告書を提出済の場合:増加する税額×35%
※この場合に過少申告加算税・不納付加算税はかかりません。

申告書を未提出だった場合:増加する税額×40%
※この場合に無申告加算税はかかりません。
※上記は原則的な規定です。上記以外にも例外的な規定が多数あるため注意が必要です。

たとえば申告期限が過ぎてしまったものの税務調査までは入っていない状況が一番多いパターンかもしれません。

その場合は、申告期限後に自主的に申告するという状況になりますが、上記表のうち、無申告加算税として本税×5%+延滞税が課税されることになるものと考えられます。

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