【法人税】為替相場の著しい変動について期末時レートで換算できる特例

2022年頃より急速に進んだ円安はさらに進行し、令和6年7月時点では1ドル162円近くまで下落しました。近年、為替相場の変動が激しく、外貨建資産・負債の含み損益の影響は大きくなりがちです。

今回は、法人を対象として、為替相場に著しい変動があった場合の特例について解説します。
この特例により、外貨建の資産、外貨建ての負債を有している会社について為替水準の実態を所得に反映させることで税負担を適正化できる可能性があります。

※【免責事項】当記事は投稿日時点に施行される法令に基づき一般的な取扱いを記載したものです。閲覧者が当記事を参考にして行った税務申告は閲覧者自身の責任によって行われ、当記事の内容に誤りがあり閲覧者に損害が生じた場合でも当事務所は責任を負いません。

この特例の内容

外貨建資産・外貨建債務、外貨預金等の項目について発生時換算法を選択している場合において、為替相場の著しい変動があった場合には、たとえ発生時換算法を採用していたとしても、期末に外貨建取引を行ったものとみなして、期末時の為替レートで円換算することが認められています

【発生時換算法とは】
発生時換算法とは、外貨建資産等の取得又は発生の基因となった外貨建取引の円換算に用いた外国為替の売買相場により換算した金額をもって期末時の円換算額とする方法を言います。
つまり、取引時のレートでそのまま評価し、期末時には為替レートが変動していても再換算しない方法です。発生時換算法によった場合、為替相場が当初の取引後に変動した場合、その後に円での決済等がされるまでは為替による含み損益が生じていても所得に反映されないことになってしまいます。

適用要件(判定方法)

期末時レートと対象の外貨建資産負債の帳簿価額の乖離がおおむね15%以上となった場合に、適用が認められます。正確な判定要件は以下の通りです。

外貨建資産等の額につき事業年度終了日の為替相場により換算した本邦通貨の額 ー 事業年度終了日の外貨建資産等の帳簿価額/外貨建資産等の額につき事業年度終了日の為替相場により換算した本邦通貨の額
≧おおむね15%以上

※上記算式中の「当該事業年度終了の日の為替相場」とは、法基通13の2-2-5で規定されています。

発生時換算法と期末時換算法の区分

そもそも発生時換算法による評価が行われている資産・負債はどういったものがあるのでしょうか?
下記の青色アンダーライン部分については、特段税務署に換算方法の届け出をしなかった場合、発生時換算法で評価することとされています。

為替換算の届け出を行っておらず、法定換算方法により換算している会社が多数派であることを考慮すると、貸借対照表に長期外貨預金、長期外貨建債権・債務、外貨建の売買目的以外の有価証券が計上されている場合にこの特例の適用対象となる可能性が高いといえます。
(換算方法の届け出で発生時換算法を選択している場合は上記にかかわらず適用対象となる可能性があります)

外貨建資産・負債の種類認められる換算方法両方認められる場合の
法定換算方法
外国通貨期末時換算法(期末時換算法のみ)
短期外貨預金発生時換算法または期末時換算法期末時換算法
長期外貨預金発生時換算法または期末時換算法発生時換算法
短期外貨建債権・債務発生時換算法または期末時換算法
期末時換算法
長期外貨建債権・債務発生時換算法または期末時換算法発生時換算法
外貨建の売買目的有価証券期末時換算法(期末時換算法のみ)
外貨建の満期保有目的有価証券発生時換算法または期末時換算法発生時換算法
外貨建の償還有価証券発生時換算法または期末時換算法発生時換算法
外貨建の上記以外の有価証券発生時換算法(発生時換算法のみ)

円安の局面において、この特例を適用して期末時レートで換算して税金面で有利になるのは負債項目(外貨建債務)が該当します。

一方、円高の局面においては、この特例を適用して期末時レートで換算して税金面で有利になるのは資産項目(外国通貨、外貨預金、外貨建債権、外貨建有価証券)が該当します。

特例適用の留意点

  • この特例を採用する場合は、すべての種類の外貨建項目について期末時レートで換算する必要があります。たとえば外貨建の債権と債務両方が発生時換算法を採用している会社について、債務のみ期末時レートで換算して所得を減少させるといったような良いとこ取りは認められていません。
  • この特例を適用するための申請書や届出書は無く、会計処理を行うだけで問題ありません。

参考法令等:法法61の9①④、法令122の4、法基通13の2-2-10、13の2-2-5

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