贈与税の計算において、贈与はいつ成立するのか?

贈与税は1月1日~12月31日までの1年間の暦年単位で課税対象となる金額を集計します。この集計をする上で、そもそも贈与がいつ成立したのかが問題となります。

全ての贈与税の計算において必ず判定が必要になる重要な部分です。今回は贈与の成立時期について解説します。

※【免責事項】当記事は投稿日時点に施行される法令に基づき一般的な取扱いを記載したものです。閲覧者が当記事を参考にして行った税務申告は閲覧者自身の責任によって行われ、当記事の内容に誤りがあり閲覧者に損害が生じた場合でも当事務所は責任を負いません。万が一記事の内容に誤りがある場合、お問い合わせフォームからお知らせいただけると幸いです。

目次

そもそも贈与の成立時期の判定によって何に影響が出るか?

贈与の成立時期は、贈与税の計算にあたって、以下のような影響があります。

・対象となる贈与に対して贈与税の申告対象年度申告期限がいつになるのか。

適用対象年度との関係で、贈与税の特例制度の対象となるかどうか。

・贈与税の税務調査による更正の時効がいつ到来するか。

また、贈与対象となる財産が不動産の場合には、以下の判定にも影響があります。

・不動産の場合は、何年度分の路線価(または倍率表)を適用して評価するか。

贈与の成立時期については主に次のA,Bの2パターンで判定することになります。

A:書面によらない贈与の場合の贈与の成立時期

書面によらない贈与とは、典型的には口約束による贈与のことです。

書面によらない贈与の場合、贈与税の計算上、実際に贈与の履行があるまでは贈与を受けたこととして取り扱われることはなく、現実に贈与が履行されてはじめて財産を取得したことになります。

なぜなら、民法において、書面によらない贈与には解除権が認められておりいつでも撤回することが出来ることになっているためです。これは、軽はずみに贈与が起きてしまうことを防止し、贈与者の意思を明確にさせるいう立法趣旨があります。口約束しただけで実際に受け取っていなければ贈与税が課税されることはありません。

民法 第五百五十条(書面によらない贈与の解除)
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

よって、たとえば母が長男に12月30日に「100万円をあげるよ」と伝え、翌年1月2日に母が長男の口座に100万円を現金で手渡した場合、1月2日が贈与により財産を取得した時期として取り扱われることになります。

なお、この場合12月30日~1月2日に現金を手渡すまでいつでも約束を解除することが出来ますが、現金を渡し終えた後撤回することは出来ません。

B:書面による贈与の場合の贈与の成立時期

書面による贈与とは、典型的には贈与契約書を作成して行う贈与のことです。

書面による贈与の場合、原則として贈与契約の効力が生じた時に贈与による財産を取得したものとして取り扱われます。

例えば現金を100万円贈与する契約において、贈与契約書の日付が令和6年12月31日で、100万円を振り込んだ日が翌年である令和7年1月4日の場合は、令和6年12月31日が贈与契約の効力が生じた時となるため、令和6年の贈与として贈与税を計算することになります。

【例外規定】不動産を贈与する場合の贈与の成立時期

たとえ書面による贈与契約があったとしても、不動産等は例外的な規定があります。
以下の事例により確認します。

【事例】
AさんからBさんに不動産を贈与する契約を10年前に締結した。贈与契約を締結した後も当該不動産はAさんが使用し続けていた。このとき、Bさんは贈与契約時に贈与税の申告を行わなかった。

それから10年経過し、Bさんは贈与を受けた不動産の利用を開始するとともに、所有権移転登記の申請を行った。登記完了後しばらくして税務署の担当者から「登記記録をみると贈与があったようですが、贈与税の申告が漏れていませんか?」と連絡があった。Bさんは「10年以上前の贈与だからもう時効です」と返答した。

上記のような主張が通れば租税回避することが可能となってしまうため、時効として取扱うことは出来ないようになっています。

所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について、その贈与の時期が明確でないときは、特に反証のない限りその登記又は登録があった時に贈与があったものとして取り扱うものとされています。


その他にも、農用地については別途規定があります。

農用地については、権利移動の許可があった日が贈与による財産の取得時期とされます。
農用地を贈与する場合は農業委員会又は都道府県知事の許可が必要となるためです。

国税庁 贈与による農地の取得の時期について

参考法令:民法550条、相基通1の3・1の4共-11、相基通1の3・1の4共-10

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