【インボイス】旅費交通費の取り扱いについて項目別にまとめて解説

今回は旅費交通費全般についてインボイスの取り扱いを解説します。

インボイスの取得・保存義務は、例外的な規定が多く存在しており複雑になっています。この記事ではそれらの例外規定を解説するとともに、旅費交通費の種類別に取扱い方法を解説します。

※【免責事項】当記事は投稿日時点に施行される法令に基づき一般的な取扱いを記載したものです。閲覧者が当記事を参考にして行った税務申告は閲覧者自身の責任によって行われ、当記事の内容に誤りがあり閲覧者に損害が生じた場合でも当事務所は責任を負いません。万が一記事の内容に誤りがある場合、お問い合わせフォームからお知らせいただけると幸いです。

インボイス制度の基本ルールのおさらい

インボイス制度の施行後は、原則課税による事業者は、消費税の仕入額控除を行うためには、大きく以下の2つの要件を満たす必要があります

A. 適格請求書(インボイス)を取得・保存すること

B. 取引先名や取引年月日、取引内容、支払対価等の一定事項を会計帳簿に記載すること

原則的にはこのようなルールになっていますが、日々少額な取引が大量に発生する旅費交通費の一部取引についてはインボイスの取得が難しいことがあり、特例として以下のような例外規定が定められています

上記の例外として旅費交通費に関連する特例規定3つ

特例規定①:公共交通機関特例【3万円ルール】

次のような取引は、インボイス発行事業者の事業の性質としてインボイスを交付することが困難なため、インボイスの交付義務が免除されています。つまり、仕入側の会社も仕入税額控除を行うにあたってインボイスの入手が不要ということになります。

<公共交通機関特例>
① 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売
④ 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
⑤ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス

ここで、旅費交通費と大きく関係があるのが①公共交通機関特例の3万円ルールになります。

では、「公共交通機関による旅客の運送」とは具体的にどういった取引を指すのでしょうか?

国税庁のインボイスQ&Aによれば、次の取引が該当することが示されています。

<公共交通機関による旅客の運送に該当するもの>
・鉄道・軌道による旅客の運送
・ 軌道(モノレール等)
・ バスによる旅客の運送
・船舶による旅客の運送

公共交通機関といっても航空機(飛行機)による運送は範囲に含められていないため注意が必要です。

次に、3万円とはどういった単位で判定するのでしょうか?
こちらもインボイス通達およびQ&Aに示されています。

<公共交通機関特例の3万円未満の判定単位>
3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します。したがって、1商品(切符1枚)ごとの金額や、月まとめ等の金額で判定することにはなりません

上記の通り、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判断することとされます。
なお、運送に直接的に附帯する対価のみで判定することとされており、例えば入場料金や手回り品料金等は取引の対価に含まれません。

特例規定②:出張旅費特例

以下の出張旅費については一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。記事冒頭のB.の要件を満たすだけで問題ありません。

・社員に支給する出張旅費
・宿泊費
・日当等
※その旅行に通常必要であると認められる金額に限る。

なお、出張旅費として通常必要であると認められる部分であれば、出張旅費等に係る社内規程や基準の有無にかかわらず、また、概算払いか実費か関係なく、特例の対象となるとされています。

特例規定③:少額特例【1万円ルール】

基準期間における課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、国内において行う課税仕入れについては税込課税仕入高が1万円未満である場合、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる

つまり国内取引で税込の取引金額が1万円以内であれば、記事冒頭のB.の要件のみでよいということになります。
また、少額特例の対象取引範囲は出張旅費だけに限らず全ての取引が対象となります。なお、これは時限立法であり、適用できるのは以下の期間に限られます。

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れ

※なお、これらの特例を適用するには、帳簿に特例の対象となる旨の記載が必要とされます。例えば帳簿の摘要欄に「◆」という記号を付す等。

旅費交通費のインボイス入手義務の判定フローまとめ

ここまでの内容をふまえて判定フローを整理すると以下の通りになります。STEP①→STEP②の順で判定します。

STEP ①:そもそもインボイス制度自体が免除になる事業者かどうかの判定

以下の事業者についてはインボイス制度そのものが免除となります。

・簡易課税を適用している事業者(=課税売上5,000万円未満の事業者)
・2割特例を適用する事業者

上記に該当するならば、STEP2で判定するまでもなくインボイスの入手不要です(旅費交通費に限らず全ての費目でインボイス入手不要です)。

STEP ②:上記で免除とならない事業者について費目別の判定

旅費交通費に関するインボイスの取得・保存義務についてまとめると、以下のように判断することとなります。
※ここでは基準期間の課税売上高が1億円超の事業者を対象としてまとめています。

費目別の判定表

旅費交通費の内容公共交通機関特例の3万円ルールを適用できるか?立替経費精算の特例を適用できるか?(左記より、)インボイスが必要なケース
鉄道の運賃
(電車・新幹線)
適用可適用可3万円以上かつ立替経費
精算以外の取引すべて
軌道の運賃
(モノレール・路面電車)
適用可適用可3万円以上かつ立替経費
精算以外の取引すべて
バスの運賃
(空港アクセスバス含む)
適用可適用可3万円以上かつ立替経費
精算以外の取引すべて
タクシーの運賃適用不可適用可金額を問わず立替経費
精算以外の取引すべて
飛行機・航空機の運賃適用不可適用可金額を問わず立替経費
精算以外の取引すべて
コインパーキング
・駐輪場
適用不可適用可金額を問わず立替経費
精算以外の取引すべて
ホテル等の宿泊費適用不可適用可金額を問わず立替経費
精算以外の取引すべて
高速料金・ETC適用不可適用可金額を問わず立替経費
精算以外の取引すべて

上表には反映しておりませんが、基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者は、少額特例が適用される取引についてもインボイスの入手を省略することができます。

なお、インボイスの入手を省略することができる取引であっても記事冒頭B.の帳簿記載要件については満たす必要があるためご注意ください。

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