暦年贈与を有効に行うための4つのポイント

この記事を閲覧されている方の中にはご存知の方が多いと思いますが、贈与税は暦年で1年間の間にもらうお金の合計額が110万円までであれば課税されません。
(※暦年贈与の注意点として生前贈与加算という規定もありますがこの記事での説明は割愛します)

それでも「本当に110万以内なら税金がかからないのか?」、「110万円ぴったりの贈与を毎年するのは危険なのか?」、「110万円以内でも後から税務署に何か言われてしまうのではないか…」と心配があると思います。

そこで今回は、たった4つのことを心がけるだけで有効な暦年贈与としての証拠力が高まる方法をご紹介します。

目次

Point1:贈与はお互いの意思の合致を確かめた上で実行すること!

贈与は、あげる側(贈与者)が贈与したいという意思表示を行い、もらう側(受贈者)が贈与を受けたいと受諾することではじめて有効に成立します。贈与の要件は民法に規定されています。

(贈与)民法 第五百四十九条
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

ごく当たり前のように見えますが、これがなかなか出来ておらず、実際には贈与の成立に疑義があるケースが大変多いです。
たとえば贈与として1年間のやり取りする金額が110万円以内であっても贈与の有効性に疑義があるのは以下のようなケースです。

事例1

認知症で施設に入っている母親が私に通帳を預けておくといっていた。母が亡くなった後は、いずれ私のものになるのだから母親のキャッシュカードから現金を引き出して私の預金口座に移し替えた。

事例2

子供の将来のために親が子供名義の預金通帳と印鑑、キャッシュカード一式を預かって金を積立している。これを将来どこかのタイミングで子どもに渡せば相続税も贈与税も回避できるだろう…


上記は贈与が成立していない典型的な事例です。事例1では「あげる」とは言われていないのに自分の口座に移し替えているため、贈与が成立しておらず、貸付金(預け金)と判断される可能性が高いと考えられます。また、事例2でも名義預金(※)として親に所有権がある預金(口座名義人が子供名義にすぎない)ものと判断される可能性が高いと考えられます。

※名義預金とは、そのお金の真の所有者とは別の人の名義で預けられる預金のことをいいます。例えば、父が持っているお金を息子名義の口座に入金して管理していること。

贈与実行時には、あげる側が「贈与したいです」、もらう側が「贈与を受けたいです」という意思の合致があることを確認して行うようにしましょう。

Point2:贈与契約書を必ず作成すること!

贈与を行う上では贈与契約書の作成が大切と言われます。それはなぜでしょうか?

金額や贈与時期について書き留めておくことは勿論ですが、暦年贈与を有効に行うための最も大事な点は、上記のPoint1でご紹介した通り、お互いの意思の合致が客観的に確認できることです。

贈与契約書は贈与について意思の合致があったことを第三者に疎明できる強力な証拠となるため、必ず贈与契約書を作成して調印とサインするようにしましょう

ちなみに、あげる側(贈与者)ともらう側(受贈者)のサインをあらかじめ活字で印字した状態で贈与契約書を作成することはお勧めしません。多少の手間がかかっても、贈与者と受贈者の双方の氏名のサインを取っておくことで証拠力を高めましょう。

Point3:贈与は毎年その都度行うこと!

暦年贈与は毎年、その都度、行うようにしましょう。

たとえば今年に110万円×将来10年分贈与契約書を作成することは定期贈与に該当してしまいます。そうすると1,100万円の贈与を今年に行ったというように税法では判断されてしまい、思いがけない課税を受けることになります(※)。

※厳密には「定期金に関する権利」として1,100万円より少し安い金額で評価されることになります。が、それでも高額な贈与税が発生してしまうことになってしまいます。

Point4:生活費口座に銀行振込すること!

贈与するお金の振込先に日常使いしている生活費口座を指定することで贈与の有効性が高まります。

これは、その振込先の口座のお金が「名義預金(※)なのではないか?」と税務調査官に疑われることを防止するためです。贈与を受ける方(受贈者)が普段自分の生活費の入出金に使用している口座であれば、贈与を受けた事実を知らなかったなんてことはまず起こり得ないはずです。

生活費口座であれば親が子供の通帳やキャッシュカード、印鑑を管理しているということもあり得えません。そのため、全く使っていない口座への贈与ではなく、日常使いしている口座への贈与が安全といえます。

補論:更に証拠力を高める方法

中には今年現金で贈与したものを過去に少しずつ贈与したことにして不正を行う事例があります(贈与契約書のバックデート)。そのような不正が行われていないかについても税務署は懐疑心を持ってチェックしています。そういった疑念を与えないためには贈与契約書について確定日付を取得することでそのようなリスクに対して対策を打つことが出来ます。

※【免責事項】当記事は投稿日時点に施行される法令に基づき一般的な取扱いを記載したものです。閲覧者が当記事を参考にして行った税務申告は閲覧者自身の責任によって行われ、当記事の内容に誤りがあり閲覧者に損害が生じた場合でも当事務所は責任を負いません。

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