相続税の申告準備中に贈与税の申告漏れが見つかった場合の課税関係

※【免責事項】当記事は投稿日時点に施行される法令に基づき一般的な取扱いを記載したものです。閲覧者が当記事を参考にして行った税務申告は閲覧者自身の責任によって行われ、当記事の内容に誤りがあり閲覧者に損害が生じた場合でも当事務所は責任を負いません。

相続人が相続税の申告の準備を行っている際に、過去に亡くなった方(被相続人)から受けた贈与の課税関係について疑問が生じることはよくあります。今回は相続税申告が必要な状況下で、亡くなった方から贈与も受けていたという場合の課税関係について具体的事例で解説します。場合によっては、大きく損をしてしまうパターンがあるため、今後相続が起きる可能性がある方は注意が必要です。

具体的事例
私の父が令和7年8月1日に亡くなりました。相続税の基礎控除を超える財産があるので相続税がかかりそうです。そのほか、父は高齢ということで生前に財産をあげると言われて、私は以下の贈与を受けています。贈与を受けた時には特に申告手続はしていません。相続税の申告にも生前贈与は何らかの影響があるのでしょうか?

 第1回目 令和5年12月15日に100万円を現金で贈与を受けた。
 第2回目 令和6年4月10日に500万円を現金で贈与を受けた。
 第3回目 令和7年3月20日に200万円を現金で贈与を受けた。

目次

贈与税の期限後申告

相続税の申告とは別途、基礎控除110万円を超える贈与については贈与税の課税対象となり、贈与を受けた年の翌年3月15日を期限として贈与税申告が必要です。

相続税の申告準備中に気付いた場合など、申告期限を過ぎている場合であっても、期限後申告を行う必要があります。

第1回目:期限後申告は不要
贈与を受けた金額が100万円です。その年の他の方から受け取る贈与も合計して110万円を超えていなければ贈与税の基礎控除以下となるため贈与税申告は不要です。

第2回目:期限後申告が必要
贈与を受けた金額が500万円で基礎控除110万円を上回っているため贈与税の期限後申告が必要です。なお、税務調査の通知前に自主的に期限後申告をする場合は、無申告加算税(5%)と延滞税がかかります。

第3回目:期限後申告は不要
贈与を受けた年と同じ年に相続が発生しています。この場合は贈与を受けた金額200万円が相続税の申告において生前贈与加算として相続財産に加算することとなり、その分だけ相続税として納税することになるため、贈与税の申告は不要です。

贈与を受けた年に相続が発生した場合には、贈与税の申告は不要とする取扱いとなっています。取扱いが異なるため注意しましょう。後述の相続財産に加算されることから、相続税で精算されるためです。

生前贈与加算

生前贈与加算については、贈与金額に関係なく、対象期間内の亡くなった方(被相続人)から相続人に対する贈与であれば加算が必要です。

加算期間については、令和8年12月31日までに起きた相続については、死亡日からさかのぼって3年間が対象期間となります。

生前贈与加算とは?
生前贈与加算とは、相続税の計算上、過去に贈与した金額も亡くなった方の相続財産として加算が要求されるものです。
死期を悟った段階で贈与すれば、死亡時の財産(相続財産)を大幅に減らすことができて、相続税を免れることが可能になります。このような駆け込み贈与を防いで課税の公平性を保つために、亡くなる前の一定期間(現在は最長で相続開始前7年以内)に行った贈与については、その贈与した金額分だけ相続税の計算において加算をすることが定められています。

第1回目:生前贈与加算の対象になる
死亡の日からさかのぼって3年以内のため加算対象となります(贈与税の非課税の範囲内であっても加算が必要です)。

第2回目:生前贈与加算の対象になる
死亡の日からさかのぼって3年以内のため加算対象となります。

第3回目:生前贈与加算の対象になる
死亡の日からさかのぼって3年以内のため加算対象となります(相続開始と同じ年でも加算が必要です)。

申告期限後に納付した贈与税に対して贈与税額控除が適用出来るか?

過去に贈与税を支払っていて、その後に相続税が課税される場合には二重課税になってしまいます。そのような二重課税を防止するために、生前に贈与を行って贈与税を支払ったものの、その贈与財産が後で相続税の課税対象となる場合には、既に支払った贈与税額を相続税額から差し引くことができます。この点、期限後の贈与税申告であっても、その贈与税を納税していれば贈与税額控除を適用することが可能です。

第1回目:贈与税額控除は適用不可
贈与税が発生していないため適用の余地はありません。

第2回目:贈与税額控除は適用可能
期限後申告を行って贈与税を納税していれば贈与税額控除を適用することが可能です。

第3回目:贈与税額控除は適用不可
贈与税が発生していないため適用の余地はありません。

暦年課税で贈与をしていた場合(相続時精算課税制度を選択していない場合)

生前贈与加算の対象となった贈与に対して納付した贈与税額は相続税額から控除することが出来ます。

ただし、注意点として、暦年課税における贈与税額控除は、相続税額が上限とされます。つまり、控除しきれなかった贈与税額があっても、還付はされません

財産総額が基礎控除を多少上回る程度のご家庭で、死期を悟って高額な駆け込み贈与を行った場合には、贈与税額が高額となる一方で、相続税額は少額ということがありえます。このようなケースでは、相続税から贈与税を控除しきれず、生前贈与をしない方がかえってトータルでの税額が少なかった、という結果になってしまうため注意が必要です。

なお、今回の事例のように贈与税の期限後申告を行う場合には、無申告加算税や延滞税も負担しなければなりませんが、これらの附帯税については、贈与税額控除を適用することが出来ないため注意が必要です。

相続時精算課税制度を選択して贈与をしていた場合

相続時精算課税制度における贈与税額控除は、相続税額を超過する部分があっても、その超過額が還付されます。

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